プロジェクトストーリー 挑戦するDNA~横浜編

 

挑戦
持てるノウハウを結集し案件獲得へ

  • 約20年ぶりに新規熱供給地点の
    プロポーザル(総合コンペ)参加へ

    港町横浜、関内・桜木町ゾーンとみなとみらい21ゾーンの結節点にある再開発エリア・横浜市北仲通南地区。2020年、この地に地上32階・地下2階、高さ155メートルの巨大なランドマークが誕生した。分散していた 市役所機能を集約し、市民利用・商業施設・議会行政機能が結集された、新設・横浜市市庁舎である。
    東京都市サービス㈱は、この新庁舎内にプラントを構え、隣接する横浜アイランドタワーも併せて、最先端の地域熱供給を行っている。

  • 新設された横浜市市庁舎

  • トータルエネルギーサービス事業部
    ソリューション技術部ソリューション技術グループ
    グループリーダー

  • 横浜市が 新庁舎の建設計画をスタートしたのは2013年。環境性・経済性に優れた地域熱供給の導入が決定し、その事業者を選定する方法として総合評価方式による公募型プロポーザルが行われることになったのだ。
    「当社は1987年の創業以来、東京都内を中心に18地点で地域熱供給の実績がありますが、新規地点の獲得に挑戦するのは約20年ぶり。ほとんどの社員にとっては今回が初めての挑戦でした」(トータルエネルギーサービス事業部 ソリューション技術グループリーダー:以下、技術GL)
    しかし、この挑戦はある意味必然といえる。2012年に株主の資本構成が変わり、新規案件を獲得する部署が拡充された。2016年4月には熱供給事業も自由化となり、ますます挑戦する場面が増えてきたのである。

     

    その中心的役割を担うのが、技術GLが属するトータルエネルギーサービス事業部。主として工場、病院などのオンサイトにおけるエネルギーサービスを開拓・実施していくとともに、再開発エリアにおける新規案件獲得にも積極的に取り組んでいる。

 

  • 環境性、経済性、BCP対策、地域共生……
    多岐にわたる評価項目

    エネルギーの面的利用を可能にする地域熱供給事業でも、通常はコストが優先されがちだ。しかし、「SDGs未来都市」の実現を掲げ、脱炭素化 による地球温暖化対策を進めている横浜市はそれだけではなかった。プロポーザルの評価項目に設定された「総合エネルギー効率(COP)の目標値1.5以上」(投入(消費)エネルギー(電気・ガス)の1.5倍以上の熱を製造する)というのは、国内の地域熱供給地点でトップクラスの省エネルギー性が求められるということ。さらに、災害時でもエネルギーを供給でき、市庁舎機能を止めることなく利用できるBCP対策も重要視されていた。
    「自治体なので、公共性、地域貢献、地産地消なども重視され、プロポーザルの評価項目は多岐にわたるという印象を受けました。横浜市から提示された基本計画をもとに、約2か月かけて提案内容を練っていきました」(同ソリューション技術グループ担当:以下、技術担当)

  • トータルエネルギーサービス事業部
    ソリューション技術部ソリューション技術グループ

 

  • インバータターボ冷凍機

  • 勝因は、過去の経験を基に独自に開発した
    シミュレーションシステム

    「約20年ぶりの新規地点のプロポーザルで、どう進めていくべきか、まずはそこからでした。今回の案件はただコストを削減すれば良いというものではなかったので、高効率な熱源機、蓄熱槽、コージェネレーションからの排熱回収、下水再生熱などを組み合わせ、経済性や環境性など複数の指標を変数とした様々な運転パターンを想定する必要がありました。そのために活用したのが、我々が独自に開発したシミュレーションシステムです」(技術GL)
    「外気温度や湿度、ランニングコストやCO2排出係数などの条件を変えて、50通り以上のシミュレーションを行いました。最後の検証作業では、当社が長年多数のプラントの運用で蓄積してきた実績データも活用しました」(技術担当)
    そして2か月にわたる精緻なシミュレーションをもとに、目標であった総合エネルギー効率(総合COP)1.5を上回るプロポーザルプランが策定された。
    2016年11月、横浜市より環境性で高い評価を得て、念願の受注を勝ち取る。「受注が決まったときの喜びは、言葉では言い尽くせないほどでした」(技術GL)

 

誇り
プロジェクトメンバーたちの試行錯誤の先に

  • 次々に立ちはだかる難題、
    メンバーが一丸となって挑む

    喜びも束の間、受注が決まってからすぐに、社内各部門から約20名で編成されたプロジェクトチームが本格始動する。会議を重ね、調整を繰り返す日々。その忙しさは想像以上だった。
    今回のプロジェクトはとにかく“初めてづくし”だった。そもそも、メンバーにとってプロポーザルで受注した案件に対応すること自体が初めての経験。コージェネレーションによるBCP電源の運用も初めてなら、熱供給事業の自由化後初めての大型案件でもあった。
    「これだけ大きなプロジェクトでは、本体設計 の協議から始まり、竣工後の運用管理方法まで、決めなくてはいけないことが多岐にわたります。そのすべてがゼロからのスタート。まさに手探り状態でした」(技術GL)

  • エリアサービス事業部エリアサービス統括部
    カスタマーサービスグループ
    グループリーダー

  • プロジェクトメンバー(他11名)

  • 「それでも運用開始時期は決まっていて、スケジュールに沿って進めなくてはいけません。東京オリンピックの開催が決まった直後で建設コストも高騰していたので、予算内に収めるのも苦労した点の一つです」(エリアサービス事業部 エリアサービス統括部 カスタマーサービスグループリーダー:以下、カスタマーサービスGL)
    さらに、 アドバイザーとして学識者を交えたコミッショニング(性能検証)を実施。システムの適正性と総合COP数値の妥当性を明確なものとした。 「地域全体での環境性を重視した都市開発が評価され、国からの補助金を得ることもできました」(カスタマーサービスGL)

 

  • オーダーメイドの技術力

    こうした“初めてづくし”に伴う数々の困難を乗り越えられたのは、プロジェクトチームを中心に各領域のプロフェッショナル達が知恵を出し合えたからに他ならない。社内には今までにない一体感が生まれていた。メンバーは部署の壁を越え、一丸となってプロジェクトに挑んでいった。
    「プラント設計の段階で、過去の経験から、運用時に使いやすい仕様の希望を細かく伝えました。その希望が十分に取り入れられ、結果的に運用しやすいプラントができたと思います。また、安全面に関する提案も積極的に採用され、思い入れの強いプラントになりました」(エリアサービス事業部 横浜市北仲通南地区熱供給センター所長:以下、所長)
    所長は、プラントの運用段階における現場責任者だが、今回はプロジェクトの早い段階からメンバーとして参画した。こうして、蓄熱槽、ヒートポンプ、コージェネレーションで構築される「電気とガスのベストミックスによる熱電併給プラント」、まさにオーダーメイドによる最先端のプラントが着々と作り上げられていった。

  • エリアサービス事業部東京第2支店
    横浜市北仲通南地区熱供給センター所長

 

  • 外観写真

  • 当社初、ついに熱電併給の 最先端プラントが完成

    2020年1月、横浜市新庁舎が竣工。地下2階には冷水と温水の蓄熱槽、熱回収ヒートポンプ3台、下水再生水を熱源とするヒートポンプチラーを設置。津波による浸水を避けるため、その他主要機器類や電気室は4階に配置。試運転を経て、その1か月後には熱供給がスタート。過去の経験に裏打ちされた運転の最適化により、排熱利用率はほぼ100%を達成している。停電発生時には隣接する横浜アイランドタワーへ電力を供給する。蓄熱槽に蓄えられた水は災害時(断水時)、市庁舎内のトイレ洗浄水としても使用可能だ。エネルギーの面的利用を実現し、その飛び抜けて高い総合エネルギー効率はすでに国内で高い評価を得ている。

  • プロジェクトを通して磨かれた東京都市サービスの強み

    東京都市サービスがこれまで積み重ねてきたものを最大限発揮し、環境性とBCP対策機能を兼ね備えた最先端のプラントを造り上げた。その達成感は大きく、自社の技術力向上はもちろん、団結力も強まり、プロジェクトメンバーとしての誇りを感じたという。
    「今までの当社は、高い現場力で設備を運用していく信頼性が強みでした。しかしこれからは、今回の横浜プロジェクトの成功により、新規地点の開発に確かな自信を得ると共に、熱電併給という新たな事業への挑戦によって、当社の強みがさらに厚みを増したと思います。今後は自信を持ってその強みを発揮し、積極的に案件を開拓していきたいですね」(技術GL)

    実際、今回のプロジェクト以降も、全国各地の再開発、エネルギーサービス等のプロポーザルに参加して、さまざまな案件を獲得している。
    試行錯誤を繰り返し、成功体験を手に入れたプロジェクトメンバーたち。新しいことにチャレンジするたび、社員の成長と共に会社もますます成長していく。
    東京都市サービスは、これからも社是である「エネルギー利用に関するサービスを通じて、お客さまと社会に貢献する」ことを目指して前進を続けていく。

プロジェクト概要

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